山陽日日新聞社ロゴ 2011年3月10日(木)
久保亀山八幡宮資料整理続報
 其阿弥の大太刀を発見
  併せて別に二振の奉納刀も確認
其阿弥の大太刀

表面に施された細かい彫り
 西久保町、久保亀山八幡宮(永井伸彦宮司)に
収蔵される史資料の整理・確認作業が、尾道学研
究会の古文書解読・半田堅二さん、尾道大学日本
文学科の藤沢毅教授、市教委文化財係の西井亨学
芸員の特別編成チームによって継続して実施され
ている中、神社の所蔵宝物記録に記載される【大
太刀 一振 其阿弥(ごあみ)作】が発見された
との続報が寄せられた。
 明治期に書き留められた神社の記録文書の内に、
所蔵する宝物一覧が記載され、その中に其阿弥作
の大太刀がある事を確認。しかしそれらしいもの
は調査時に全く見当たらず、戦時中の供出で出さ
れたのかもしれないと一同落胆していたところ、
後日宮司宅より白い布にくるまれた太刀が見つか
り、銘を確認したところ、【於備州尾道其阿彌権
治郎】とあり宝物一覧のそれである事が判明した。
 太刀は長さ約2m50cmもあるまさに大太刀で、
研ぎ直しを必要とする保存状態ながら、その迫力
には一同が圧倒されていた。また、刻銘部分もは
っきりと読み取れ、「天保五年二月吉日鍛之」、
【研師 玉ノ浦住 松本平兵衛 越智安長、三原住
田中保兵衛橘文一、同所住 原田喜代平源秀光】
と3人の研ぎ師の名も刻まれている。
 いつ誰がどういった経緯で八幡宮へ奉納・寄進
されたのかは不明だが、その辺りは半田さんが担
当する古文書の内からえ出される可能性もある。
 其阿弥は、三原を発祥と伝える中世以来の刀鍛
冶一派(刀工集団)で、時宗常称寺の開祖・他阿
真教上人にお札切りの小刀を献上した際、上人よ
り「其阿弥」という号(時宗独特の阿弥号)を賜
り、それが姓となって今に続く。尾道の鍛冶屋町
に長ぐ定住し、鍛冶職人の守護神・金山彦神社を
祀る長江艮神社の境内には「顕彰碑」が建つ。
 備後一の宮吉備津神粁(福山市新市町)の宝物
館には、国重文指定の太刀が奉納されており、こ
ちらは前の顕彰碑にその名が讃えられる其阿弥長
行の作で、天文24年(1555)に長行が奉納した品。
 八幡宮への奉納刀としてこの他【山城国来國春
在銘刀 二尺八寸八分】、八幡宮が所管する山脇
神社(山王さん)への奉納刀として「美濃国関住
人兼元在銘刀」の二振があり、こちらは大正3年
に粟村敏顕氏によって奉納されている。
 八幡宮と同事務局では、裸の状態となっている
大太刀を保管する箱を用意すると共に、県教委に
も刀剣の登録状況を確認の上、専門家のアドバイ
スも聞きながら、総代会にも上げて今後の取扱い
を慎重に検討して行きたいとしている。
【写真下】=宝珠を追う龍の装飾。尾っぽには剣
を巻き付けている。



ニュース・メニューへ戻る